第16章 硫酸をかけられる

「……何がおかしい」

有川紘樹は眉をきつく寄せた。佑奈が不意に笑ったのが、どうにも気味が悪い。

「娘で脅せば、私が言うことを聞くと思った?」佑奈は鼻で笑う。

「私があげたお守りだって、あの子は佐伯薫に渡した。私のことを母親だと認めない子を、私が認める理由ある?」

有川紘樹の顔色がかすかに変わり、思わず口を突く。

「……お守りを、薫に?」

あれが、佑奈が神社で頭を下げ続けて、やっとの思いで授かったものだと——彼も知っている。

珍しく言葉が途切れ、沈黙が落ちた。

「そんな恩知らず、あなたに押しつけられるなら願ったり。離婚協議書にだって書いたでしょう。いらないなんて言ってない?」

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